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2013-11-23 大平晋也の作画を語ろうin東大 メモ

削除してしまった自分で書いた掲題の記事がWEB魚拓に残っていたので,念のためにコピペしておく.当時配布された冊子もほかの人に譲ってしまってそこに記入していたメモも何も残ってない状態で記憶も曖昧なので,内容については記事を書いたときよりも「こんな内容だったっけ?」みたいなところはありつつ.以下コピペ.


 ※個人的メモをそのままてきとーに書きうつしただけのものです。メモのときに端折ったり間違えたり、メモをとらずになんとなく記憶で書いている箇所も多いので、いろいろと抜けや誤りがある可能性があります。ここに書いてあることと、イベントでそういう発言があったということが、必ずしもイコールではないことに注意してください。

1. 挨拶

(東大:今日は名古屋からわざわざお越しいただいた。)
普段は名古屋で仕事をしている。打ち合わせとかのときだけ東京に来ている。
こんなアニメーターもいるのかな、と思って聞いてもらえればと思う。

2. 事前アンケートについて

(1)大平さんを知るきっかけとなった作品
1位 FLCL
2位 THE八犬伝~新章~
3位 イノセンス

(2)一番好きな大平作品
1位 THE八犬伝~新章~
2位 虹色ほたる
3位 ユンカース・カム・ヒア

FLCLはそんなに自分の中で力を入れたつもりはなかったが、みんな意外と見てくれて、おもしろいと思ってくれたようだ。
八犬伝~新章~は自分のスタンスを押し通していて完成度は高いと思う。
虹色ほたるは最近の作品だから上位なのかな?
ユンカースはパイロット版だけしかやってないからこれが上位なのは意外。

3. ダイジェスト映像を上映

(東大)大平さんが選んだご自身の仕事の動画を流しますが、その前に大平さんから一言いただければ。
(大平)え、そんなの選んだっけ?記憶にない…
(東大)じゃあとりあえず流すので見ながらコメントください。→動画再生
いろいろ流れる。

紅の豚:初のジブリ作品。宮崎さんには「とにかく余計なことはするな」と言われた。
ユンカース:田辺さんうまい。大橋さんのところ動きはそのままでディティールだけ直している。2~3か月で終わらせないといけないところを半年ぐらいかけてしまい、降ろされた。「趣味で仕事されても困る」と言われた。
八犬伝新章:動画で流れたとこはほぼラフしかしてない。ディティールは二原さんのもの。
FLCL:普段は2コマだけど3コマでやってみた。
ギブリーズ:これも2か月ぐらいのところを半年ぐらいかけた。
イノセンス:当時こういうのはやりたくなかったが、やらざるを得なかったのでカット内にキャラが1人だけのところをやろう、ということでこのシーンを担当することになった。
キルビル:荒いタッチは作監さんがやってくれた。
お伽草子:TVで時間がなく波とか荒さが残ってしまった。
もも:自分でもぐちゃぐちゃだと思う。井上俊之さんに「お前何やってんだ」と言われてしまった。

4. 作品リストを参考にこれまでの仕事を大雑把に振り返る

アニメーターになるきっかけ。自分の能力と家庭環境もあって大学進学が難しかった。高校でアニメーション制作していたことがあったが、特にそこまで好きではなかったし、家で落書きしたりもしなかった。絵を描くようになったのは仕事で始めてから。ビスマルクはしんどかった。

当時は3年ぐらい動画をやってから原画に上がるのが普通だったが、自分の絵が描きたいから早く原画になりたくて、動画たくさん描いて8か月で原画にしてもらった。初原画はうまくいかなかった。

メガゾーン:レイアウト切ってない。触手がパイロットを惨殺するシーンとか、森本さんとか上手い人の合間をやってる。
マシンロボ:確か2話もやった。バンクシーンやったら何回も流れるのが嬉しかった。
キャプテンパワー:初作監。あまり修正は入れてない。動きがつながってないところとかエフェクトを少し直しただけ。
DRAGON'S HEAVEN:これもあまり修正してない。ひたすらタッチのみ追加していた。
AKIRAで周りの人たちの影響でリアル指向に憧れを持った。うまい人たちが多くて楽しかった。すごい人がいるという話題になっていたのでそこで初めて橋本晋治さんの原画を見たが、地味なシーンだったので良さが分からず。本人にはこの段階ではまだ会っていない。
御先祖様:1話アバン(レイアウトはやってない)。2話ラストをやった。3話ハーモニーだけやって動いてない。
Angel Cop:タイトルアニメーションをやった。エフェクトを橋本さんと2人でやった。
八犬伝(新章じゃない方):御先祖の後だからうつのみやっぽくなっている。いいと思ったらそればかり描いてしまうので演出に怒られる。AKIRAでリアル指向にいったり影響をうけまくる。田辺修さんのシーンが良い(後半の洞窟のシーン)
骨董屋:原画もとびとびでやったと思う。田辺さんは冒頭オヤジがふらふら座り込むとこ。
紅の豚ジブリは宮崎監督が絶対だからこれまで自分がやってきたような自由さは無い。怒られながらも、なんとか自分の絵は残せたと思う。

八犬伝新章:キャラも芝居も自由にリアルに描きたいように描いた。キャラデザはあったものの、キャラを俳優に見立てて、この俳優さんならこういう動きするよね、という感じで描いた。湯浅さんはクレしんで知った。最初作監を橋本さんに頼んでいたが断られ続けたので、当時自分の中で湯浅さんがヒットしていたので直接シンエイに電話してお願いした。湯浅さんからは制作進行の人と思われて、話をしていて「あ、制作さんじゃないんですね~」とかそんな感じだった。湯浅さんつながりで亜細亜堂の人とかが参加していて藤森さん(ノンクレ)とかうまい人がいて驚いた。

八犬伝後、しばらく引退して実家の仕事をしていたが、アルバイトで橋本さんの仕事を手伝ったりしていたので、復帰後も特にブランクを感じることはなかった。

FLCL:復帰後の仕事だが、これでみんなが面白がってくれたのかな。
Sci-Fi HARRY:キャラデザは決まっていたが、OP用にキャラを描き起こした。血の涙を流すとこ、目の中で主人公が朦朧としてるとこ、上から降りてきて水中に入るシーンとかのイメージ的なところをやった。最後のカットは橋本さんと共同。
千と千尋:動きもかっちり宮崎。ディティールは自分の絵が出ている。2カットほど、自分の考えで動かしたカットもあるが、ばっちり修正されていた。
ギブリーズ:素人のダンス甲子園とかを参考にした。メガネのやつはマイケルっぽく。なんでこれ1コマにしたんだろう。ぬるぬるして気持ち悪いだけだよね(笑)
アニマトリックス:もう少し橋本さんらしくデフォルメしても良かったのではと思っていたが、実写の映像にあわせたからこういうキャラになった。スケボのシーン、4℃が映像を用意した。
キルビル:ヤクザ映画なのでヤクザ映画を見て参考にした。ああいう動きは自分ではできないから弟に演技してもらった。
風人物語:キャラデザ段階でキャラが波打ってたからあえて自分でアレンジしたとかは無い。
ハウル:光に関しては自分の発想と宮崎監督のイメージが半々で入っている。
お伽草子:12話は龍の前後15カットぐらい。あまり動いてない。6話もだが、レイアウトまではやったが半分ぐらい落とした。

わんわ(その場で上映):自分の子ども用に。背景もクレヨンとか折り紙とか特殊なやつは自分でやった。橋本さんも自らのカットのBGを数枚描いている。吉成鋼さんは、当時吉成兄弟が有名になっていたのでぜひやってもらいたいと思い、直接電話して参加してもらった。

アスラズラース11.5話(その場で上映):コンテが元から用意されていて、それを修正していくところから仕事が始まった。スケジュールのない作品だった。田辺さんとか大物になってて頼めなかった。若手に頑張ってもらった。宮沢康紀さんがうまい(腕が暴走して敵を薙ぎ払うところ)

虹色ほたる:自分からやらせてもらえるように橋本さん経由でお願いした。中盤と後半。中盤はラフ原の段階で森の修正が乗っていて、お願いしてやらせてもらったのだからと、修正をなぞった。後半はレイアウトの修正で鬱憤がたまっていた。今回は中盤と違って自分を出しに行った。自己満足で「このシーンはこうだから、こういう作画が格好いい」とか考えずに描いてどうぞ修正してくださいと思っていたらそのまま完成画面になっていた。

風立ちぬ:会社で製図始めるところのラフ原。結構描き込んでるけど顔や頭身は似てないというか完全に描きたいように描いてて別人。その別人のままある程度動きを描いてから、頭身が高すぎるから頭をでかく描いて頭身を低くしつつ宮崎キャラっぽく似せる修正をしていく。今回はそこそこ似せて描いたつもりだが、動きはだいたいそのままだが絵柄は高坂先生にしっかり修正された。その他、数式を書くとこ(地味なところ面倒くさい)とか計算尺とか飛行機とかをプレビュー。原画だとやわらかい線だが、動画できれいに描いてもらっている。

イノセンス:バトーの修正前・修正後を交互に見ながらプレビュー。沖浦修正のリアル感。自分のはバトーが溶けて細くなっている。

その他いろいろプレビューしていただいたが、時間がなく、用意してきてくれてたものの一部だけ見て資料の紹介終わり。もっと見たかった。

5. 影響を受けた作画

1位 うる星 オンリー・ユー 山下将仁パート
2位 うる星 #97 山下将仁パート
3位 ブライガーOP
4位 AKIRA 井上俊之うつのみや理パート
5位 御先祖様 ピアノのシーン、海の家の前での犬丸と文明のやりとり

6. Q&A(事前質問に答えるコーナー)

これまでにうまくいったと思う仕事は?→ない
動きを観察するときに何に注目している?→その人の癖とか口調とか。特に腕を描くときにどう動くんだろうと気になるので腕はよく見る。
仕事でつらいときってどんなとき?→レイアウトとかで動きを描いていくのは楽しいが、清書がつらい。単なる作業になってるのがつらい。
原画で重点を置いていること→いろんなものを詰め込んでしまう癖があるのでそれをいかに削るか。だいたいいろいろ詰め込みすぎてメインでないものをちゃんと出すべきもの以上に画面に出してしまい失敗する。
1コマと2コマの違い→2コマは写実的な動画になる。3コマのリミテッドではない。1コマは重さの表現。重いときは中にいっぱい動きが入る。
注目している若手アニメーター→4~5人いるけど名前ちゃんと憶えてないからここでは言えない。あ、一人はBahiさんです。
磯さんのイメージ→デフォルメで動く!動く!というイメージ。
最近見た中で良かった作品→ミロスとかストレンヂアとか。
これからどういう方向に行くか→方向性は特に考えていない。やりたくて温めているものはある。
アニメーター志望者に向けて見ておいた方が良い作品とか→体感すること。見てるだけじゃわからない。画面だけでなく、実際に見て触って遊ぶ。

7. 最後に

名古屋造形大学でアニメーションの講師業をやっている。知り合いに名古屋でアニメを学びたい人がいたらよろしく。アニメーションコースはまだできて間もないので作品とか今はまだ少ないが、これからどんどん作っていきたい。今日はありがとうございました。